競合というと「敵」のように思われがちですが、そうではなく、私が考える経営はあまり他を蹴落とすことを美徳としていないので、ここでは「何に挑んでいるか」という視点で考えてみたいと思います。
それでは先に結論から。
競合相手は同業者とは限らない。そして競合はいま考えて設定するものではない。
それはミッションステートメントに書かれている。
競合をどのように考えているかは、まさに経営者の視座を表しています。
つまり競合をどのように設定するかによってその経営者の見ている景色がわかるのです。逆に競合が曖昧になってしまっている場合は経営の判断にブレがでてしまっているかもしれません。
そして、競合相手は同業者ばかりではないということなのです。タクシー会社の競合相手は他のタクシー会社なのでしょうか?居酒屋さんの競合相手は同じエリアの居酒屋さんなのでしょうか?
そして、競合相手を今の気分で「では、どこに挑もうかな」とノリで考え始めてしまってもダメなのです。
なぜなら、あなたの会社の理念やミッションステートメントを見ればそこに競合相手が書いているのです。
では、例を挙げます。王道はディズニーですね。
■ウォルト・ディズニーが掲げたミッション
わたしの仕事は人々のため、とくに子供たちのために、幸せを想像することである。
この「想像」というところがディズニーの本質かもしれません。この想像力が浸透しているからこそ、有名な「ディズニーランドは永遠に完成しない」という名言が広く知られているのかもしれません。
ディズニーのテーマパークのお好きなアトラクションをひとつ思い出してください。そこに「幸せを想像」している工夫が必ずあるはずです。
次の例はテーマパークや遊園地という括りでは似た場所になる、富士急ハイランドです。
■富士急ハイランドのミッション
お客様から選ばれるオンリーワン、そしてナンバーワンの施設とサービスを創造します。
この「ナンバーワン」がいかにも富士急らしいですし、わくわくしてきます。とにかく「日本一」「世界一」を謳っているアトラクションが多いですよね。
上記のようにそれぞれの掲げているミッションを眺めると、確かに「わざわざ行って1日遊ぶ場所」という意味では同じでも、お客様の体験の中身自体が違います。つまり、ディズニーランドと富士急ハイランドは競合はしていないのです。
だからこそ、時間的な制約や予算の都合もありますが、きっと富士急ハイランドで1日遊んだ後も、次の日にディズニーランドで遊ぶことに飽きることはありません。
そして、きっとディズニーは「幸せの想像」している他のストーリーやメディア、そして人間が本来持つ想像力そのものに挑んでいるのです。
テスラも脱炭素社会の構築をミッションにしているので、他の自動車会社と競合していないのですよね。それがテスラの株価に含まれる「未来への期待値」として評価を受けているところなのでしょう。
私が経営するChaChaグループのミッションステートメントはこの通りです。
ミッション 20年後を創る
ビジョン Education is Empathy よりよく理解することで、世界は変わる。
バリュー 育てているのは、未来
私たちは保育園という場所や幼児教育という仕事を通して、20年度の社会を創っています。そしてミッションのところに「●●な子どもたちを育てます」「▲▲▲という特徴の保育を推進します」というようなことは書いていません。つまり、保育園を運営すること自体は目的ではなく手段なのです。すると、私たちは20年度の社会をつくることに邁進しているので、同じ街にある他の保育園さんや幼稚園さんは競合相手ではないのです。
しかも、少子化やコロナ禍の影響で保育園の需要自体が徐々に減ってきているこの時代に、保育園同士が争ったところで、一緒に落ちてゆくだけです。
昨今、街中に歯医者さんが溢れています。立地ひとつで競争環境が変わってしまいます。でも歯医者さん同士で競っていても、人口減の世の中で誰も勝者にはなれません。
すると、まずはしっかりミッションステートメントを定め、経営者自身がその視座に立って愚直に行動するしかないのですよね。