幼児教育の世界は、多くの人々の生活に密接に関わる割には、なかなか独特な言葉遣いをする業界です。
特殊な業界用語は思っているよりも難解なものです。
社会で一般的に理解できる言葉に置き換えて伝えないと、伝えたいことが伝わりません。
そこに気付けるか否かで、コミュニケーションの品質に差がつきます。
気をつけねばならない一例
例えば、保育所保育指針に、「子どもの最善の利益」という言葉があります。
この言葉をそのまま使った際に、幼児教育に携わる方には伝わるニュアンスも、一般の方々には伝わらないと思わなければなりません。
「利益」と聞いて、それが教育的そして福祉的な利益、つまり子どもたちの生命が守られ、情緒が安定し、子どもたちが自ら育ってゆく機会に恵まれている状態、という正しい認識を持てる一般の方は少ないと思います。
なぜなら「利益」の定義は一般的には「売上から費用の引いたもの」ですから。商売の言葉ですから。
「子どもの最善の利益」という言葉を一般社会の方々聞いた時に、「他のどんなことよりも子どもたちにとって特になることを優先し、例えばご老人への配慮などをどんどん無視すべき」という誤解をもって理解をしてしまう人が多いのです。
その誤解を責めるのではなく、伝え方が悪いことに気づくべきです。
盲目的に業界特有用語を発信するリスク
それに気づかずに、保育園などがその法人理念や保育方針に「子どもたちの最善の利益のために」とか書いちゃうケースが多いのですが、伝えている側が伝えたいニュアンスと読み手側の理解するニュアンスにズレが生じやすいリスクを、経営上最も重視されるべき理念の制定という根幹に持ち込んでしまってはいけないのです。これは大きなリスクです。
他にも、「生きる力(ちから)」という言葉も使い方を間違えると誤解を生みやすいワードなのです。
コトバを味方にするか、敵にするか
言葉はポジティブにもネガティブにもチカラを持ちます。だからこそ、その「伝わり方」について繊細に捉えて敏感になりたいものですね。